2024年4月、セプテーニグループの経営体制が刷新され、4代目グループ代表に神埜雄一さん(当時41歳)が選任されました。
日本では社長の平均年齢60.7歳、交代率が3%台(※1)と、事業継承がされにくい環境のようです。そんな中で、セプテーニグループは創業約35年で4代目の社長が就任。
このスピード感と若さに驚き、「セプテーニの事業継承を紐解く旅」に出ることにしました。
というわけで、SEPTENI STORY編集部です。
事業継承について調べている中でおもしろいキーワードを見つけました。創業者七村さんの言葉です。
七村さんは、1990年に会社を設立した時、創業メンバー7人で2つのことを誓ったといいます。
1つは「上場すること」。そしてもう1つは「同族経営をしないこと」。
「同族経営をしないこと」について、七村さんはこのように話しています。
「(「同族経営」の場合、)新しいことがしたいという情熱に溢れた社員が現れたときに、その情熱を失わせたり、あるいは人材そのものを失ったりすることは企業にとって致命傷と言えるのではないでしょうか。(途中省略)誰にでも登用されるチャンスがあるとなれば次世代からも素晴らしい人材が輩出されることでしょう。」
日本の上場企業の約半数がファミリー企業である中(※2)、七村さんは、創業時点で既に次世代の情熱溢れる人材に事業継承していくことをイメージしていたようです。
そしてそのイメージ通り、情熱に溢れた社員が4代にわたって社長というバトンを継承し、セプテーニグループの成長を牽引しているのです。
※1 帝国データバンク全国「社長年齢」分析調査(2024年)
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20250325-presidentage2024/
※2 「ファミリービジネス白書2022年版」(白桃書房)
https://www.hakutou.co.jp/book/b598321.html
創業者
七村 守
1991年4月(当時36歳)~ 2004年12月(当時49歳)
2代目
野村 宗芳
2004年12月(当時45歳)~ 2009年12月(当時50歳)
3代目
佐藤 光紀
2009年12月(当時34歳)~ 2024年3月(当時49歳)
4代目
神埜 雄一
2024年4月(当時41歳)~
さらに調査を進める中で、私は気づきました。
社長や役員などの事業継承に留まらず、セプテーニグループの中では、あらゆるシーンにおいて、次世代へのバトンタッチが頻繁に行われているのです。
権限委譲が各領域・レイヤーで行われていることについて、セプテーニ代表取締役 清水雄介さんはこう話していました。
「託す側になった時、一番大切なのは“信じる力”だと私は思っています。『権限委譲』という言葉にすると乾いて聞こえますが、その根底にあるのは、性善説で相手を信じ、そして『君の良さ・強味はこれだから、君ならできるよ!』と期待を込めて託すということなんじゃないかなと。」
七村さんの書籍「経営も人生も『ひねらんかい』」にも「リーダーのルール」としてこのようなことが書かれています。
「マネージャーは経験のない部下を見て『自分ならできるけど部下にはできない』と判断しがちです。しかし、マネージャーにできて部下にできないという根拠はまったくありません。できるかできないか、させてもいないうちから『できない』と思い込んで仕事を任せないというのでは、マネージャーあるいはリーダーとしての資質に欠けると言わざるをえません。こうした上司の下では、部下は能力を伸ばすことができないでしょう。
(中略)だから私は社員に対し「部下は自分よりも優秀かもしれない」と思って仕事を任せることを勧めています。」
「若い⼈を信じて託す」この連鎖が、託す人、託される人、そして事業・会社を大きく成長させていく推進力になっているのでしょう。
ここで疑問を感じました。託す人は「信じる力」が必要。
では託される側に必要なことは何なのでしょうか?
過去のインタビューで、Septeni Japanの小嶋さんが先輩から大型顧客の担当を託された時のことをこのように語っています。
「何とか先輩のスピードに食らいついていけるようになって、自分では先輩と同等にクライアント企業に向き合えるようになったと思っていました。
そんな矢先、クライアント企業の担当の方から『提案に小嶋さんの意思が感じられない』と言われてしまったのです。とてもショックでした。
でも振り返れば、先輩のやり方を踏襲する方法で提案していたり、クライアント企業の要望のままに対応したり、より良いサービスを提供するためのアクションができていなかったことが、クライアント企業にも伝わったのだと思います。
デジタルマーケティング業界は市場の変化がとても早いので、先輩が少し前にやっていたやり方をマネしているだけでは求められているレベルを超えられないということに気づきました。
自分の強みを生かした独自のスタイルを確立しないと、クライアント企業のビジネス成長に貢献できず、パートナーとして認知も評価もしてもらえないことから、市場の変化に対応できる力や先輩のスタイルに加えて、自分なりのスタイルをつくり上げることに注力するようになったのです。」
すでに関係が構築されているから現状維持で良いということではない。託される者は、それまでの土台を活かしながら、自分の強味を発揮し、期待以上の結果を残していかなければいけない。
託される側は、そうした覚悟をもってバトンを受け取っていることがわかりました。
託す側と託される側、それぞれの力と覚悟が噛み合って、バトンリレーが脈々とつながってきたのです。

gooddo株式会社
代表取締役
下垣 圭介
ソーシャルメディア部門を立ち上げた当初、メンバーは私と新卒社員の2名でした。当時はまだ媒体側も広告取引の環境が整備されておらず、アナログな作業が多かったんです。私は終日営業で外出していたため、そのアナログな入稿・レポート作業をすべて新卒のメンバーに託していました。彼女は作業をしながら「非効率だ」「面倒くさい」と、とにかく“文句”が多かった(笑)。でも、ただ不満を言うだけでなく、「もっと効率的に早く仕事を終わらせるには?」を考え抜き、自ら業務改善をやりきっていたんです。託された業務をただこなすのではなく、「いかに無駄をなくせるか」を徹底的に考える姿勢の重要さを彼女から学びました。

Septeni Japan株式会社
中川 竜太
アドネットワークの運用を行う部署にいたときの話です。当時私が担当していた顧客の引継ぎを検討していた時、後輩メンバーが「僕が引き継いで、中川さんはもっと他のことやった方がチームの“全体最適”になると思うので、大変そうですが頑張ります!」と前のめりに引き受けてくれたんです。 その後、彼はすぐに大きな壁にぶつかりました。私が「一緒に考えようか?」と声をかけると、「大丈夫です。自分でできるところまでやってみます!」と。最終的に彼は誰もやったことのない手法で見事に課題を解決してくれました。そんな彼の姿勢から私自身も学ぶことが多く、引継ぎを通じてそれぞれの成長を実感した出来事でした。
「若い人を信じる」。このカルチャーはいつからあるのでしょうか。
グループ副社長執行役員(※2026年3月末退任)の上野勇さんに聞いてみると、少し微笑みながらこう話してくれました。
「セプテーニグループは、創業3年目から新卒採用を開始しているんです。普通だったら社会人経験のない新卒より、即戦力の中途社員を採用すると思いますよね。資金も潤沢にない中で、数年は利益を出せないであろう新卒社員を雇用するのはとてもリスクのある決断だったと思います。実際とても悩んだと七村さんも言っていました。それでも新卒採用することを選んだ。それくらい若い力を信じていたんだと思います。結果的に新卒社員を育成してみると、仕事へのスタンスやカルチャーの吸収が早く、1年目から成果を出し戦力化したんです。」
現時点のスキルや経験値だけで判断せず、これからどう開花するか。
そんなところを楽しんでいるようにもうかがえるセプテーニグループらしいエピソード。
でもふと考えました。どうして実績がない中で、そんなに人を信じられるのだろうかと。
そのことについて、社外取締役の石川善樹さんはこんな話をしてくれました。
「『信用』と『信頼』の違いだと思います。『信用』は過去の実績や成果に基づく客観的な評価で一方通行のものに対し、『信頼』は双方向の感情的な結びつきです。だから『信頼関係』とは言うけれど、『信用関係』とは言わない。また、1回のミスで一瞬で崩れるのが『信用』です。
セプテーニグループは、能力・実績ではない“信頼の文化”というのがなぜかあるんですよね。なので仮に50年後、事業の形が変わったとしても、セプテーニグループが『若い人に託す会社』であること、すなわち“Keep Young”を体現する会社であることは変わらないのだろうと思います。」
この石川さんの言葉を聞き、私たちの中で点と点が線になった。
経営体制の刷新は、「新しい世代、新しい時代をつくる人への経営の継承を通じ、新ビジョンの達成および当社グループの持続的成長を目指す」すなわち「Keep Young」を目的に行われています。グループ執行役員の中には30代で抜擢された方もいます。
「若い人に託す」という文化こそが、セプテーニグループ全体に持続的な成長と革新をもたらし、未来を切り拓くイノベーションを創出し続けるための鍵となっているのでしょう。
『託される覚悟』そして『託す力』。
それぞれの立場での思いや考えを紐解いたところで、「事業継承を探る旅」は一旦終幕。
信頼の上での継承と、ひとりひとりのチャレンジが、今後もセプテーニグループの成長を加速させていくのでしょう。
さて、これまであなたは誰に信頼され、何を託されてきましたか?
そして、未来に向けて挑戦するために、あなたは誰に何を託しますか?